光導波路とは、光ファイバを平板基板上に作製したものであり、光の伝搬のみならず、光の領域での信号処理が可能な光波回路を実現するものです。 光波回路を実現するためには、光導波路を分岐・合流させたり、自由に曲げたりすることが不可欠です。 しかし、従来の光導波路は曲げに非常に弱く、数度の曲がり角度でも光が大きく減衰してしまいます。 つまり、集積回路における電気配線のように、光の配線を90度に曲げることは不可能となっています。 このため、光波回路はサイズが非常に大きくなり、光波回路の集積化は実現されていません。
曲がりに強い光導波路にするためには、光が伝搬する領域(コア)とその周囲の領域(クラッド)の屈折率差を大きくすれば良いことがわかっています。 そのため、屈折率が大きなSiをコアに用いた光導波路(Si光導波路)の研究が行われています。 本研究室でもSi光導波路の研究を行っていますが、以下の特徴があります。
Si光導波路はクラッドとなる部分のSiをエッチングして実現されますが、エッチング壁面(コア・クラッド境界面)の荒れにより伝搬損失が劣化します。 そこで、コア以外の領域のSiを選択的に酸化させてクラッドを形成し、Si光導波路を実現するものです。 具体的には
というプロセスになります。
CMOSプロセスは集積回路を実現するプロセスであり、光デバイスの作製は考慮されていません。 CMOSプロセスでは、Si基板上にSiO2などの層間絶縁膜を介してポリシリコンが抵抗などに利用されています。 そこで、このポリシリコンを光導波路の材料として利用しよう、という内容です。 これが実現されると、集積回路と光導波路が同一プロセスで集積化できるという利点があります。 具体的には、VDEC(大規模集積システム設計教育研究センター)のCADを用いて光導波路パターンを設計し、VDECを通してCMOSプロセスのみで光導波路を実現します。
CMOSプロセスを利用してSi光導波路を作製する他、スパッタリング法などによりポリシリコンやアモルファスシリコンを形成して、Si光導波路の実現を目指しています。
アモルファスシリコンによるSi光導波路については、波長830nm の光の伝搬を確認しました。 結晶シリコンではこの波長の光は吸収されて伝搬しないので、アモルファスシリコンの特徴といえます。